日本語の表現の中で、「むかえる」と打つと、漢字では「迎える」と「向かえる」の二つが現れます。一見似ているようで、その使い分けに戸惑うことがありますよね。
実は、私も長い間、その違いを理解せずに使っていました。しかし、最近詳しく調べてみると、両者の意味の違いが明らかになり、間違えると意図しない表現になることに気づきました。
そこでこの記事では、それぞれの言葉の意味と使い方を深堀りしてみます。
例えば、「むかえる」と表現された以下のフレーズは、どちらの意味でしょうか?
「とうとう、本番の日をむかえる」
「敵をむかえうつ」
「9回裏をむかえる」
「その日、その時間ならそちらへむかえる」
記事の後半で、これらの答えを紹介します。
1. 「迎える」と「向かえる」の意味の違いとは?
まずは、一般的に知られている「迎える」と「向かえる」の意味について解説します。
「迎える」とは?
「迎える」は、広辞苑によると以下のような意味があります:
人が来るのを待つ。
ある時期が訪れる。
招く。
家族として迎え入れる。
浄土から迎えに来る(仏教用語)。
敵を待ち受ける。
相手の意向に応じる。
これらの意味合いでは、「迎える」とは「何かが自分の方へ向かってくるのを受け入れる」という共通のニュアンスがあります。
たとえば「歓迎会」は新人を迎え入れる行事、「迎撃ミサイル」は向かってくるミサイルを迎え撃つという意味です。
「向かえる」とは?
次に、「向かえる」という表現ですが、実はこれは広辞苑に記載されていません。
これは「向かう」に「れる(可能)」が付いて、「向かうことができる」や「向かうことが可能である」という意味を持ちます。
例えば、「その日、その時間ならそちらに向かえる」という使い方が適切です。
「向かう」の後に「れる」「られる」「える」が付くと、「○○することが可能」という意味になります。
他の例としては、「買う」+「える」=「買える」(買うことができる)、「着る」+「られる」=「着られる」(着ることができる)などがあります。
ただし、「向かう」の受け身形としての「向かえる」は実は存在せず、「迎える」がその役割を果たします。「迎う」という表現も使われません。
練習問題の答え
それでは、序文で出した練習問題の答えです:
とうとう、本番の日を「迎える」
敵を「迎え撃つ」
9回裏を「迎える」
その日、その時間ならそちらに「向かえる」
「迎える」と「向かう」の違いとは?
「迎える」と「向かう」は、一つの事象を異なる角度から捉える表現です。
「向かう」とは、自身が目的地に向けて進行すること。「迎える」とは、目的地にて何かを待つことです。
例えば、敵軍に「迎え撃つ」とは、敵が進んでくるのを待ち、攻撃範囲に入れば攻撃を開始すること。
しかし、「敵を向かえ撃つ」という表現は普通使われませんが、もしそう書けば、敵陣地へ進んで攻撃するイメージになります。
「明日を迎える」と「明日に向かう」も意味が異なります。
「明日を迎える」は、明日の到来を待つか、新しい日を受け入れること。
一方で、「明日に向かう」は、例えば絶望的な状況から立ち直り、何とか明日へ進むことを意味します。
要するに、「迎える」と「向かう」は、視点と方向性が異なります。
相手や時が自分の方へ来る場合は「迎える」、自分が特定の方向へ進む場合は「向かう」と表現されます。
「迎えに行く」とは?
「迎えに行く」の場合、「行く」という言葉が含まれているため、自分が相手の方向へ移動することになります。
しかし、これは「向かう」ではなく「迎える」の正しい形です。「迎えに行く」とは、自分が効率を考えて出向き、その場で相手を迎えるという意味です。
たとえば、海外から帰ってくる友人が空港で移動手段を持っていない場合、自分が車で友人を迎えに行き、自宅まで送ることになります。
この場合、「迎えに行く」と伝えるのが正しいです。
自分は確かに空港に向かいますが、「迎えに行く」という行為は、友人を日本で迎えることを意味しています。
4. 「迎える」と「向かえる」の使い方を詳しく解説!
「迎える」と「向かえる」、これらの言葉は日本語においてよく使われる表現です。
それぞれの使い方を具体例を交えて見ていきましょう。
①「迎える」とは?
常連のお客様が今日到着予定。お客様を心待ちにして迎える準備。
(お客様が到着する)
待ち遠しい映画の公開日がついに訪れる。
(公開日が訪れる)
来週、遂に定年を迎える日がやってくる。
(定年の日が訪れる)
眠れなかった夜を経て、朝が訪れる。
(朝が訪れる)
②「向かえる」とは?
14時頃に集合場所に到着できそう。
(集合場所へ行くことが可能)
職場のチームが団結し、良い方向に進めるよう努力する。
(良い方向に進むことが可能)
集中すれば、12時間もパソコン作業に没頭できる。
(パソコン作業に没頭できる)
時間は1時間しかないが、間に合うルートを選ぶ。
(間に合うルート)
努力すれば、どんな困難にも立ち向かえる。
(困難に立ち向かうことが可能)
まとめ
ここまでが「迎える」と「向かえる」の違いと使い分けに関する解説です。
「向かえる」は、「向かう」と「られる(可能)」が組み合わさった形で、辞書には直接的な記載がない言葉です。この言葉は「向かうことができる」という意味で使われます。
一方、「迎える」は、何かが自分に向かってくるのを受け入れる際に使用します。
逆の使い方をしてしまうと、意味が不自然になってしまうので注意が必要です。私も間違えることが多かったので、しっかりと理解しておきたいですね。