5月が近づくと、風に美しく泳ぐこいのぼりの姿が目に付くようになります。 「屋上よりも高くこいのぼり~」と歌われるように、この季節になるとマンションの窓や庭から風になびくこいのぼりを見かけることができます。 私が育った家でも、母がこいのぼりをよく飾っていました。しかし、5月5日にこいのぼりを飾るのには何か理由があるのでしょうか? 今回は、5月の節句にちなんでこいのぼりの流れとその意義、また、菖蒲湯についてもお話ししたいと思います。
鯉のぼりを飾る意味とその起源は何?
歴史を辿ると、日本では5月5日に将軍家に男子が誕生した際、鯉のぼりを上げて祝福するという習慣がありました。将軍家というのは高位の人々で、男子や後継ぎが誕生すると大いに喜びました。その将軍家の習慣を真似る形で始めたのが、武士の家庭だったのです。武士の家では、「将軍のように強くなること」や「将軍に対する忠誠心を示すこと」などの意味を込めて鯉のぼりを上げました。
そして、次第にその習慣は富裕な一般家庭でも行われるようになりました。見栄を張るために立派な鯉のぼりを飾ったという話もあります。そうなると親たちの間では見栄え合戦になったのでしょう。事実、鯉のぼりの起源にはいくつかの説があります。一つは、「鯉が滝を登る」話が中国起源でそれを元に作られたというもの。また、日本の武士が昔掲げていた旗が変化して鯉のぼりになったという説もあります。どちらの説も子供たちの健やかな成長と出世を祈るものであったのです。
吹き流しの5色!それぞれの色には何か意味があったの?
大きな鯉のぼりの上にあるカラフルなものを吹き流しと呼びます。吹き流しの色は、赤、青、黄色、白、黒の5色から成り立っています。最近では緑や紫も取り入れているものもありますが、基本的にはこれら5色が用いられています。
それぞれの色には、中国の五行説に基づく意味があります。火は赤、水は黒、木は青、金は白、土は黄色に対応しています。この五行説が鯉のぼりにも関連しているとは驚きです。中国では五行説がバランスよく働くことで、物事がうまくいき、罪悪から身を守ると信じられています。そのため、吹き流しには魔除けの役割があると言われているのです。
吹き流しは全ての色が揃ってはじめてその力を発揮します、一色でも欠けてしまうとその力を失ってしまうのです。それぞれの色に深い意味があるとは、驚きでした。また、地域によっては鯉のぼりを北向きに飾るのがタブーとされていることもあるようです。このように、魔除けや縁起物としての意味合いが込められていたのです。
子どもの日は菖蒲風呂で過ごそう!
中国の端午の節句には、魔を除ける力があるとされる菖蒲を飾る習慣があり、それが日本にも伝わりました。具体的には、鎌倉時代から江戸時代にかけて、菖蒲を使って身を清める風呂が一般的になってきたようです。また、「菖蒲」の響きは「勝負」に通じ、武士たちは戦へ赴く前に菖蒲風呂に浸かって身を清めたという話もあります。現代にまで続くこれらの風習は驚きですね。
ちなみに、実際に菖蒲風呂に使う菖蒲を見たことはありますか? 実は一年中手に入るわけではなく、子どもの日の時季にスーパーや花屋さんで見ることができます。
菖蒲風呂の作り方は、お風呂の種類によります。例えば、湯を沸かして使うタイプのお風呂では、水を張る前から菖蒲を入れます。だからといって、「菖蒲風呂って大変では?」と思われるかもしれませんが、実は思いの外、手間は要りません。
その上、菖蒲風呂には血行を良くする効果や冷え性改善などの効能があるとされています。菖蒲の根元を細かく切り、網の袋に入れて浮かべるだけで、より効果を引き立てることができます。ただし、細かく切った菖蒲は、後の掃除が大変なので、10分程で袋から取り出すことをおすすめします。
私自身、公共の浴場での菖蒲風呂の経験があります。その日は子どもたちがたくさんいて、とても楽しい時間でした。あの時、特別に菖蒲風呂が用意されていたのだと、今になって気づきました。
まとめ
鯉のぼりの起源や吹流しの意味など、子どもの日に関連する物事には深い意味が込められています。「子供たちが元気に暮らせるよう、災いから保護される」という願いを語り、それらの意味をわかりやすく子供たちに教えることができます。さらに、菖蒲風呂は自宅でも簡単に作れます。
鯉のぼりも菖蒲風呂も、子どもの日に行われる大切な儀式です。これらの伝統を次の世代にも伝えて、節句の本来の意味を理解するきっかけにしたいものです。